帰り道









  夕焼けが目に刺さります・・・。
ワタシを抱えたマスターの後を無言で着いてゆく私。
マスターは有彦さんの家を出てからずっと無言のままです。
「あ・・・あの。マスター?やっぱり怒ってます?」
「当然です。仕事が山積みのこの時期に家出をするなんて
一体何を考えているんですか?」
恐る恐る顔色を伺う私に足を止めて私を振り返るマスター。
無表情なのが余計に怖いです。
「帰ったら1ヶ月は休暇なしですよ?わかってるんですか?」
「はい。ごめんなさいです」
「ところで・・・」
少しだけ意地悪く微笑むマスター・・・
「休暇は楽しめましたか?・・・・・・ななこ」
「え?・・・え〜?」
何故でしょう。何故マスターがその名前を知っているのでしょう・・・。
「なにを慌ててるんですか?貴方には対盗難用にGPSと盗聴器は
きちんと装備してあるんですよ?忘れたんですか?」
ああ、そう言えばそんな事を以前仰ってました。って・・・
「それじゃあ・・・」
「始めは乾君が拾ってくれた事がわかってすぐに取りに行こうと思ったんですけどね・・・」
マスターのどこか懐かしいような温かい微笑み。
全然、似合いません。何か悪いものでも食べたのでしょうか。
それとも何か天変地異の前触れかもしれないです。
「ヒトの恋路は邪魔したくありませんからね。・・・特に初恋は一生に一度のものですし」
「は・・・ははははははは初恋〜ってー!?」
マスターはなにを仰ってるのでしょう?恋だなんて・・・そんな。
・・・ああ、何故でしょう不意に有彦さんの顔が浮かんで頬のあたりが熱くなってきました。
「わわわ私が有彦さんにこここ恋なんてそそそそんな・・・。」
「なにを慌てているんですか?・・・」
「・・・ええと、その・・・」
考えても見ませんでした。
私が誰かと恋をするだなんて・・・。
ああ、意識したらまた顔が赤くなってきてしまいました。
「顔が赤いわよ」
「あ、はい、ごめんなさいマスター」
「悪いことだとは言ってませんよ。寧ろ、何も知らないまま精霊になったセブンが、
少しづつでも成長できるのはマスターとして嬉しいくらいです」
「マスター・・・」
いつになく優しい言葉、ああ、そうです。この顔、
初めてお母さんに手作りのプレゼントをあげた時に
お母さんがこの笑顔で頭をなでてくれました。
「本体の一部も乾君の家にこっそり置いてきましたから、仕事がお休みのときは
時々お邪魔させてもらいなさい。そのほうが私も心置きなく遠野君を家に招待できますし」
照れたように歩き始めるマスター。
「だからといって仕事にさしさわりがなく
あちらのご迷惑にならない程度にしてくれないと困ります・・・って、
聞いてるんですか?人の話を・・・」
「あーはい聞いてます。・・・ますたー?」
「なんですか?」
いつもの表情で振り返るマスター。
「ありがとうございます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なにぼんやりと突っ立って間の抜けた挨拶してるんですか。
早く帰ってオーバーホールと微調整のしなおししないといけないんですから、
さっさと歩いてください・・・」
無表情に歩き始めるマスターの顔が照れくさそうに微笑んだ気がしました。
「えーまた、改造するんですかー?」
「誰の所為だと思ってるんですか。川になんか飛び込むから余計な錆だの泥だので、
使い物にもならないんです。」
いつもと変わらない会話なのに何故でしょう、こんなにほっとするのは・・・。
でもそれはマスターには内緒にしておく事にして、
私は夕焼けの中に溶けていきそうな後姿を慌てて追いかけ始めました。



あとがき

SS初挑戦です。2次はやっぱり難しいですね。(ついでに短編も)
本編(ななこSOS)終了直後の話だと思ってください。
・・・クリスマスネタじゃなくてごめんなさい。











はい、二発目。鹿島凛さんでした。


この人こんな綺麗なSSひっさげて駄作とか言ってくれました。


おいおい、こんな癒されるSSかいて駄作なら俺ってどうなのよ。ほのぼのを名乗ることが出来なくなってしまうのですが。

あー!マジ時間ねえ!申し訳ねーっす!







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