とおのけのふだんのいちにち\あきはのしつもん\





 ここは日本のどこかにあるという小さな町。

 その小さな町の中で、誰もが知っているちょっと変わったお屋敷での出来事。

 今日はいったい何が起きるのでしょう?

 さっそく覗いてみることにしましょう。



 この部屋がそのお屋敷で一番大きい部屋です。

 部屋の中にはソファーや椅子があって、テーブルを挟んで向かい合うように男の子と女の子が座っているのですが、
紅茶を飲んでいるのは男の子だけで女の子のカップには手がつけられていません。どうしたのでしょうか?

 どうやら女の子は男の子に話しかけたくてしょうがないようです。

 女の子は少し考えて決心したらしく、男の子に話しかけました。


「兄さんは、その……やっぱり胸の大きい女の子のほうがいいんですか?」


 どうやら男の子と女の子は兄妹のようですね。

 そして女の子はお兄さんが好きみたいです。

 でも日本の法律では兄妹が結婚することは出来ません。

 それでもこの女の子はお兄さんが好きみたいです。顔を真っ赤にして質問しています。


 たしかに女の子の胸はぺったんこでした。

 好きな男の子がいるから気になるとかいうレベルではないほどぺったんこです。

 そのぺったんこな妹の質問に対してお兄さんはこう答えました。


「胸とかはいい、ついんてーるにするんだ」


 ………どうやらお兄さんは髪型にこだわってるようです。

 それに対して妹も言いました。


「ついんてーる? それは一体なんですか?」


 お兄さんは妹がついんてーるを知らないことに憤りを覚え、不機嫌そうにしながら写真を一枚妹に見せました。


「この髪型がついんてーるだ」


 妹はびっくりしました。
 それは髪型にではなく、その写真に写っていたのが知らない女の子で、お兄さんが女の子の写真を持っていたからです。

 よく見るとその写真に写っている女の子はお兄さんの通っている学校の制服でした。

 妹はうつむきながらお兄さんに聞きました。


「その、この人は兄さんの……ガ、ガールフレンドですか?」


 お兄さんは妹を気にするでもなく答えます。


「そう、だな……考えてみればガールフレンドに間違いは無いな」


 妹はショックで泣きそうでした。

 それでも聞かなくてはいけないと思ったのか、必死に泣くのをこらえてお兄さんに質問しました。


「兄さん……今、幸せですか?」


 お兄さんは椅子から立ち上がり、妹の座っているソファーの前に移動して、妹の隣に座りました。

 お兄さんはなぜ妹が悲しそうにしているのか、わかりませんでした。

 ただばくぜんと、自分のせいなんだろうか、と考えました。


「そうだね、あれから八年たってようやく秋葉や翡翠、琥珀さんと一緒に暮らせてる。
 これで不幸だなんていったら罰が――いやそうじゃないな。今、とっても幸せだよ」


 そういって妹を抱きしめてあげました。

 妹はもう我慢できず、お兄さんの胸を涙でぬらしました。






 それからほどなくして秋葉ちゃんは眠ってしまいました。

 お兄さんは顔をあげ、廊下に向かっていいました。


「琥珀さん、そこにいるんでしょ?」


 すると廊下から着物を着た優しい眼をした女の子があらわれました。


「気付いてたんですか?」

「ついさっきですけどね」


 志貴くんは自分の膝に頬をつけて眠る秋葉ちゃんの髪を撫でながら答えました。


「琥珀さん、秋葉を部屋に連れてくからココの片付けお願いできますか?」


 さきほどまで志貴くんと秋葉ちゃんは、お茶の最中だったのでテーブルの上にはカップがありました。


「はい、わかりました」


 琥珀ちゃんは微笑んでやわらかい返事をすると、さっそく片付けを始めました。


「あ、志貴さん」

「ん、なに?」


 琥珀ちゃんはテーブルに置かれた写真に気付き、志貴くんを呼び止めました。

 志貴くんは秋葉ちゃんをお姫さまだっこで部屋に連れて行こうとしていました。

 気を失ったり、眠ったりしている人間はすごく重く感じるのですが、
志貴くんはボクサーのように引き締まった体だったので簡単に秋葉ちゃんを抱き上げていました。


「コレ、忘れ物ですよ」


 そう言って琥珀ちゃんは、テーブルにおいてあった写真を志貴くんに渡しました。


「あ、すいません」

「ダメじゃないですか、大切な恋人の写真忘れて行っちゃ」


 そういう琥珀ちゃんの瞳も秋葉ちゃんほどではないものの、悲しそうでした。

 でも琥珀ちゃんの言葉を聞いた志貴くんは、びっくりした顔をしてこう言いました。


「ち、違いますよ! 弓塚さんは、その……」

「弓塚さんって言うんですか、この方。でも違うって、さっきガールフレンドだって……」


 志貴くんはすごくあせりながら説明しています。


「だから、女友達ですよ。と・も・だ・ち」


 どうやら志貴くんはガールフレンドを友達と考えているようです。

 たぶん秋葉ちゃんは彼女、つまり恋人かと聞いたつもりだったのです。

 それを志貴くんは『ガールフレンドに間違いは無い』と答えたのです。

 秋葉ちゃんが勘違いするのも無理はありません。


「じゃあなんで写真を持ってるんですか?」


 琥珀ちゃんは体を志貴くんに近づけて威圧するかのように問いただします。


「それは弓塚さんが俺の写真と交換して欲しいって。
できればいつも持ち歩いて欲しいって言われたんだ」


 琥珀ちゃんはびっくりしました。

 それも当然です。なぜなら弓塚さんの言葉は告白そのものです。

 弓塚さんの告白を、言葉どおりに受け止める志貴くんの愚鈍さは神の領域と呼ばれるものに今にも届きそうです。


「じゃあ秋葉を部屋に連れて行きますから、あとはお願いします」


 あまりの衝撃に琥珀ちゃんは言葉も出せず、放心したまま志貴くんと秋葉ちゃんを見送りました。



 後日、眠りから醒めても、ずっと落ち込んでいる秋葉ちゃんを不便に思ったのか、
 琥珀ちゃんは秋葉ちゃんに弓塚さんの説明をして秋葉ちゃんは元気になりました。

 そして秋葉ちゃんの志貴くんに対するアプローチがより直接的なものになったんだけど……、

 志貴くんが秋葉ちゃんの想いに気付いたのは、志貴くんが翡翠ちゃんと仲良くなった後だったそうです。





 今回はここでお終いです。

 だけど、もちろんお話はこれだけではありません。それでも今回はここまで。

 こんなふうに毎日が過ぎていく、それがこのお屋敷での普段どおりの一日。

 毎日毎日たくさんの出来事が起こるお屋敷、大変だけれどそれでも毎日が楽しい。


 志貴くんが大好きな秋葉ちゃん、そんな秋葉ちゃんの想いに憧れてる琥珀ちゃん、
 今日はお掃除で出てこれなかった翡翠ちゃん、そしてそんなみんなの中心の志貴くん。

 世界は今日も廻る、もちろん明日も廻る。

 今日も、明日も、明後日も、ずっと楽しい一日が続きますように。



後書き

 なんとなく絵本ちっくにしたいなとおもってこんな風になりました。
 ただ単に作者の精神年齢が低い状態で書いたみたいになっちゃいましたね……
 もうすこし煮詰めないとダメですか? そうですね。










20万ヒット記念にBBCさんよりいただきました。


丁寧語だからこそ面白いものがありますね。


BBCさん、どうもありがとうございました。








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