らいおんの一日









らいおんの1日

【05:45】 ZzzZzz……。
……げぺっ
うー……ZzzZzz。

【05:58】 Zzz……いい匂いがする……。シロウの匂いとは違う香ばしい匂い……。
……今日の朝食は焼き魚のようですね。
起きて顔を洗ってきましょう。これから食事に挑むのですから身だしなみはキッチリしないと。
それにしても……お腹、下腹部の辺りが痛い。

【06:03】 顔を洗って、歯磨きをしながら考える。
この下腹部の痛みは何だろう?話に聞いたアレでしょうか…。
いや、アレは、その、そういうコトをシないと、で、デキない訳ですから……。
覚えも、無い、事ですし……。ま、まさか、私が寝ている間に!?
……………………。
シ、シロウに聞いてみれば分かりますね!


【06:05】 ど、どう切り出しましょうか……。
このような告白は初めてだ。うーん、……『シロウ。妊娠しました。』
い、いや、違う!幾らなんでもそのまま過ぎる!それにまだ確定した訳ではない!
こう……わずかに、それとなく事を匂わせる形で……。
そう、その線でいきましょう!せ、せーのっ

「シロウ、下腹部が痛い。妊娠したようです。」

ち、違う!これではそのまま言っているのと変わらないではないか!
違う!桜、違うんです!
朝から下腹部が摩訶不思議に痛むのでシロウに聞いてみただけで……。
そんな怖い目で見ないで下さい!

【06:07】 「天地神明に誓ってそんな行為に及んだ事は無い!」というシロウの叫びで桜と私は納得した。
そもそもシロウはその様な不埒な行為を働くような人物ではなかった。疑ってしまった事を反省。
それにしても、我ながらナニを想像していたのだろう……。
気が付けば大河が居間に来ていた。慌てて朝の挨拶をする。すると彼女は、
「おはよー。は、良いけど……セイバーちゃん顔赤いねー。風邪でも引いちゃったー?」
と尋ねてきた。すまない大河、今はその事に触れないでほしい。

【06:10】 そういえば下腹部の痛みの事がうやむやになってしまった。
先程、私がその事を口にしたとき、桜が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたが。
……聞くのは止そう。
私のサーヴァントとしての直感が
『やめろ、不用意にアレに近づくな。――先手ヲ取リ、切ッテ捨テルベキダ』
ト、告ゲテイル。
  ルカ?  ッテイイノカ?
『■ラレル前ニ、■レ』
ソウダ。……殺ロウ。
――はっ!?……私は、今、何を?

【06:20】 待ちに待った朝食。
相変わらずシロウと桜の作る料理は美味しい。
つい食が進んでしまうが、婦女子が何杯もお代わりをするのもはしたない。
1回だけで我慢する。(注:ドンブリ飯)

【06:30】 私が食事を終える前に大河は早々に食事を終えて学校へ。
顧問をしている弓道部の主将と、練習が始まる前にお茶を飲むのを日課にしているらしい。
大河曰く「美綴さん、最近色々とあったから」
自堕落な性格をしているが、こういった辺り優秀な教育者だ。

【06:35】 食事を終え食後のお茶。
しかし……食欲を……満たすと……眠気が……。
寝る……なら部屋に……こん……な……とこ……はしたな…………ZzzZzz。

【06:45】 ZzzZzz……ん……シロウが……何事か話し……掛けて……きている……。
……学校……なのだろう……いってらっしゃい……ZzzZzz。

【08:00】 ZzzZzz……んー……といれ。
…………………………………………。
へや、もどる…………ZzzZzz

【10:00】 ZzzZzz……。
……ぅー、シロゥ。
……ZzzZzz。

【12:00】 ZzzZzz……『くきゅるるぅ〜』。
うー、お昼ですね……。くあぁ〜…ふぅ。
こんな姿はシロウや凛には見せられませんね。一人だからできる事。
それにしても、 またシロウの部屋で眠ってしまっていましたか。
無意識にこの部屋に来てしまうのは、我ながら何とかならないものだろうか……。

さて居間に行きましょう。シロウと桜が作ってくれたお昼御飯が待っています。

【12:03】 箱の中におかずを入れ、スイッチを押すと温かくなるという画期的な道具。
「でんしれんじ」
毎日のようにこの道具の世話になっていますが、これを発明した人は偉大だと使うたびに思う。
冷めた料理が温かくなって美味しく食べられる。この上なく素晴らしい。
しかしどういう仕組みになっているんでしょう?中に料理人がいて調理をし直しているのだろうか?
……興味が尽きません。今度分解してみようと思う。

【12:05】 昼食を作ってくれているシロウと桜に感謝しつつ食事を始める。
今日はフリカケが付いているようですね。
白いごはんも美味しいですが、フリカケをかけて食べるのもたまには良いものだ。
「ごはんにかけて食べてください」と桜の文字で書かれている袋。中身は……黒い?
黒胡麻、では無いようですね。これは本当にフリカケなのだろうか?
しかし食べなければ折角用意してくれた桜に申し訳ない。
こんな混沌とした色彩のフリカケは見たことが無いので恐らくは自家製……。
せっかく作ってもらっているのですから、言葉で感謝するだけでなく、
残さず綺麗に食べる事でも感謝の気持ちを伝えたい。
サーヴァントとしての直感が「口に入れるな」と声高に叫んでいますが……。覚悟を決めました。
しかし桜が何か特別な事をする時は、決まって私の直感が良くない事を告げてくる。
――ヤハリ、殺ルカ?……フフ。

【12:10】 フン、コノ程度ノ毒デ、コノ私ヲドウニカシヨウトハ、片腹痛イワ!
クックックッ、ハッハッハー!

【12:15】 ――おかしい、気付いたら食事を終えていた。
美味しかった、という記憶は残っていますが……。
食事の最中の記憶が曖昧になるとは……。とりあえず片付けをしてしまいましょう。

【12:30】 片づけを終えて道場へ。
ここは考え事をするのに向いています。落ち着いて色々と考えられる。
さて、なぜ昼食中の記憶が曖昧になったのか考えてみましょう。
考える……考える……考え……かん……ZzzZzz。

【14:00】 ZzzZzz……んー……といれ。
…………………………………………。
へや、もどる…………ZzzZzz

【16:00】 ZzzZzz……。
……桜死ナス
……ZzzZzz。

【17:30】 ZzzZzz……。
……むーぅ、玄関から物音。シロウたちが帰ってきたようですね。
食事の時間になったら起こしに来てくれるはず。もう少し寝ていましょう。
……自堕落と言う事無かれ。
英霊たるこの身を維持するためには無駄な魔力の発散は防がなければなりません。
その為には睡眠をとる事が一番。凛への負担も私が寝ていれば軽くなる。
だから私は仕方無く1日の殆どの時間を睡眠にあてているのです。
……そう、あくまで仕方無く。
という事で……ZzzZzz。

【18:30】 ZzzZzz……。
……ぁ、シロゥ……ぁぅ。
……ZzzZzz。

【19:00】 ZzzZzz……。
「おーい、セイバー起きてくれー」
目の前にシロウが居る……。
先程までこの身を抱きしめてくれていたのに離れてしまっている……。
どうして止めてしまうのですか?はやく続きを――。
……?シロウ、いつの間に服を着たのですか?
ついでに言うなら、私もいつの間に服を着て布団に入って――?
……………………。
――ふぇっ!?わ、私は何を!?違う!シロウ違うんです!
いえ、違うというのは決して望んでいないという訳ではなく、
シてくださるのでしたら私も吝かではないというか、むしろ望むところというか!
って何を言っているんだ私はー!?

「……続き?違う?セイバーどうしたんだよ?」
ひとしきり騒いだ後に居間に向かいました。
幸い致命的なことは口に出さなかったようだ……。
安堵した反面、落胆と言うか……。少し複雑です。

【19:05】 一日の締め。夕食。
大河はキャスターのマスターの代わりに来た教師の歓迎会で不在。
桜は実家に居る兄の世話、なので今日は3人で食事です。
今日は中華ですか。ということは凛が担当したのですね。
凛が作る中華料理は全般的にとても美味しい。
しかし何故、麻婆豆腐だけがあのような物になってしまうのだろう……。
正にこの世のものとは思えぬほどの辛さで、
以前に麻婆豆腐が食卓に上った時にはシロウは一口食べた瞬間に悶死。
桜は言うに及ばず、大河ですら根を上げるという始末。
かくいう私も、あまりの辛さに濡れ布巾で口の中を拭いたくなる衝動を覚えた程。
そんな中、ただ1人黙々と麻婆豆腐を食べる凛を見て、
改めてこの人をマスターとして認めようと思ったものです……。
何故、麻婆豆腐だけアレほどまでに壮絶な辛さなのか、それとなく尋ねたのですが、
凛曰く「私に中華料理を仕込んだヤツのせいよ」との事……。
それ以来衛宮家では麻婆豆腐禁止令が凛を除く全員の賛成により発令されました。
それにしても、あの時の桜の凛を見る目は凄まじいの一言でした。
微弱な魔力を感じるとはいえ、
よもや一般人の視線にサーヴァントである私が寒気を覚えるとは……。
もっとも凛は何処吹く風でしたが。
今日はそんな騒ぎも無く美味しく頂きました。
ところでシロウにだけ出された亀のような物は何なんでしょう?はじめて見る食材です。
食べてみてもいいですか?

【19:25】 夕食終了。3人で後片付け。
後片付けの最中、シロウと凛が何故かソワソワしはじめる。
そういえば今日は月末の金曜日。……アレの日でしたね。
アレ……シロウが凛に魔力を提供する日。

ここは気を利かせて早めに入浴を済ませて部屋に戻りましょう。
なんでしょう……。胸の奥が、ズキズキと痛みますね……。

【21:00】 入浴を済ませ部屋へ。
胸の痛みがまだ治まらない。
……寝てしまおう。なんの解決にもならないとは分かっていますが、
今の私の状態では冷静に物事を考える事など出来そうにありません……。
……………………。
……………………うぅ、ぐすっ。
……………………。
……………………ZzzZzz。

【23:00】 ZzzZzz……といれ。
…………………………………………。
へや……シロウのへや……ZzzZzz






〜おまけ〜

朝日の眩しさに目を覚ます。
自分の部屋で目を覚ますのが久しぶりに感じる。
それもそのはず、平日は土蔵で疲れ果てるまで修練をしてそのまま就寝。
早朝にやってくる桜に起こされるのがパターン。部屋で寝るのなんて週末くらい。
久しぶりに感じるのも当然か。
身体を起こして伸び。全身に若干の疲労感。
うーん、睡眠時間は充分な筈なんだが、昨日はちょっと頑張りすぎたな……。
なんと言うか、若気の至りというか、月一だと溜まりに溜まった分が燃え上がるというか。
……朝っぱらから何考えてるんだか。
まぁ俺のせいとばかりは言えないよな。遠坂も一般家庭の夕食にスッポンなんか出すか普通……。

さて、さっさと布団を畳んで朝食の準備をするか。
あんまりのんびりしていると休日なのに、早朝に家にやってくる桜に台所を占拠されてしまう。
さぁ布団を畳もうと、掛け布団を持って……硬直。

セイバーが、俺が寝ていた布団で、気持ちよさそーに寝息を立てています。
つまり、俺は、セイバーと、一緒に、寝ていたと。

あー、あー、落ち着け俺。布団から視線を離して考える。
昨日は遠坂と、そのーアレした後に朝は桜と藤ねぇが来るから別々の部屋で寝ようって事になったんだ。
で、俺は風呂に入って自分の部屋に戻ってきたと。
で、自分で布団を敷いて1人で寝たと。うん、間違いない。

視線を布団に戻す。
起きる気配の無いセイバー。


……なんでさ。


まぁね実はさ、伸びをするために身体を起こした瞬間に気付いてたよ。
妙にこんもり膨らんでる布団が目に入ってさ。でもまぁ第六感っていうの?魔術使いの感ってヤツ。
それが働いて、それには触れないよ―に、何事も無く一日が始まる風を装ってみたら、
ひょっとしたら何にも無いんじゃないかなー、寝てる間に無意識に地蔵でも投影してみちゃったかなー。
なんて淡い期待を抱いていたわけですよフェイカーこと衛宮士郎は。

そんな誰に聞かせるわけでもない取り止めの無い事を心の中で呟いていると、
襖の向こうから地の底から響くような低い声。


「しろーう。牛乳切れてるわよー。コンビニまでひとっ走りして買ってきてー」


オウ、ゴット。なぜ貴方は牛乳が切れてて不機嫌なあくまが、
セイバーが寝ている(ここ重要)俺の部屋に来るという素敵イベントを起こしてくれやがりますか!?
くっそぅ。昨日の買出しのときに牛乳(低温殺菌)を買い忘れるとは……なんたる不覚!
このままでは、セイバーが「……シロウ」なんて寝言呟きながら幸せそうに寝ている俺の部屋に
赤いあくまこと遠坂が入ってきてしまう!
こんな所を見られた日には、「赤いあくま」が「赤いまおう」に進化し、
爽やかな週末の朝が一転して阿鼻叫喚の終末の朝に……!


「士郎?まだ寝てんのー?――なんだ起きてるじゃ……」
「やぁっ、おはよう遠坂!」


無駄だと思いつつも爽やか路線で軽やかに挨拶。
所詮、俺にできることなんてたかが知れているのさ……。


「……」
「……」


ち、沈黙が痛い……。
まおうだ、まおうが此処に居る……。

「ねぇ衛宮くん?」
「ハイ。ナンデショウカ遠坂サン」
「朝ごはん食べてないわよね?」
「そりゃ……起きたばっかりだしまだだけど」


ひょっとして俺、助かる?助かる?バンザーイ神様ありがとー。
今だったら遠坂特製マーボーも藤ねぇの料理モドキも喜んで食べさせて頂きます!
命が無くなるよりはマシさ!


「そう、それじゃわたしが用意して食べさせてあげるわ。……道場でね


……ど、道場デスカ?
ひょっとして、それは、「朝飯代わりにわたしの拳を喰らいやがれ」ということデスカ?
つまり朝食という名の折檻デスカ?
心が恐怖に塗り潰されていく。起き抜けで空っぽの胃がシクシクと痛いゼ。
脂汗をダラダラと流しながらも、僅かに残っているハズの希望にすがり
ソロリソロリと視線で赤いまおうに問い掛ける。


その前に話くらい聞いてくれても損は無いと愚考いたす所存にございますがコレいかに?


「……」
「……」


素敵だ……。素敵過ぎる笑顔だ……。
むんずっ、と襟首を引っつかまれて道場に強制連行される衛宮士郎こと俺。
さようなら爽やかな朝。こんにちはまおうの折檻。
どうやら土日の休日は完全に寝たきりで過ごす事を覚悟しなければならないらしい。




End




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あとがき
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読了ありがとうございます。

随分と間が空いてしまいましたが、またお目にかかることが出来ました。
浅葱祐吏でございます。

今作「らいおんの1日」ですが、「桜日記」をセイバー視点で書いたものです。
もっとも重なって展開しているのは朝の衛宮家の食卓風景くらいなんですけどね。

さて、今回は解説じみたことをやってみましょうかね。

今回は「黒さは控えめ。可愛らしさを前面に」を意識して書いてみました。
なので、「桜日記」のような黒さを期待してらした方には、
期待はずれだったかもしれません。ご容赦を。

なんて偉そうな事言ってますが要するに、
赤面したセイバーさんが書ければそれでOK!
な訳だったんですねー、はい。セイバー分補給。

妊娠疑惑を士郎くんに告白するセイバーさん。
寝言で士郎くんの名を呟いてるセイバーさん。
電子レンジに興味津々なセイバーさん。
寝ぼけて士郎くんにおねだりするセイバーさん。
食事に細工されて■に殺意を抱くセイバーさん。……アレ?

それと読んでてお気づきになった方も多いと思いますが、
セイバーさんトイレ近いです。
まぁコレには理由がありまして、喰っちゃ寝、喰っちゃ寝の生活を送っている
セイバーさんですが(あくまで浅葱の中のセイバー像)、何故太らないんだろー?
という疑問に対する1つの回答といいますか。
えー、すなわち「食べたらすぐ出す」(食事中の方ゴメンナサイ)
という訳で、セイバーさんにはこまめにトイレに行ってもらっています。

あとオマケですが、
セイバーさんを泣かせた士郎くんに天誅。以上。

では今回はこの辺で。
また機会がありましたら、お目にかかりましょう。










浅葱祐吏さんありがとうございました。

桜日記のセイバー視点ということで、なんかもういよいよもって俺日記シリーズに手を出せません。

まあ、せっかくですから書ける方に書いていただくのがいいでしょうし。
あるなら続きや別の人のも見てみたいですね。







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