問おう。あなたが私の――――





舞台は海と山に囲まれた都市・冬木市。
何の変哲もないこの街に、少しずつ侵食する闇があった。

 手にした者の願いを叶えるという聖杯。
その聖杯を実現させる為、一つの儀式が行われようとしていた。
聖杯に選ばれた七人の魔術師(マスター)に、聖杯が選んだ七騎の使い魔(サーヴァント)を与える。

騎士 "セイバー"
槍兵 "ランサー"
弓兵 "アーチャー"
騎兵 "ライダー"
魔術師 "キャスター"
暗殺者 "アサシン"
狂戦士 "バーサーカー"

マスターはこの七つの役割(クラス)を被った使い魔一人と契約し、自らが聖杯に相応しい事を証明しなければならない。
つまり。
マスターとなった者は他のマスターを消去して、自身こそ最強だと示さなければならないのだ。
杯を求める行いは、その全てが“聖杯戦争”と呼ばれる。
この地に起きる儀式は、その名に恥じない“殺し合い”といえるだろう。







 幼い頃火災によって両親を失い、孤児になった主人公“衛宮士郎”は魔術師を名乗る人物“衛宮切嗣”に引き取られる。
養父の反対をおしきって魔術を習う士郎だが、まったく才能がなく何年とかけて身についた魔術は一つだけだった。
その養父も今は亡く、士郎は半人前の魔術師として成長し、養父の知人であり学校の担任であり姉代わりでもある女性“藤村大河”と平穏な日々を送っていた。
そうして現在。
偶然マスター同士の戦いを目撃してしまった士郎は、口封じのため青き槍兵に命を狙われる事になり――――







「―――っ!」
迫る穂先。
ついさっき己の命を奪ったそれが、再び右胸に突き出される。
こんな所で訳も分からず死ぬ訳には行かない……その思いとは裏腹に、加速された己の思考は不可避の最期を冷酷に告げる。

死ぬ。

半人前の魔術師でしかない衛宮士郎では……いや、例え一流の魔術師であろうとこの状況を切り抜ける事などできない。

確実に死ぬ。

未熟な自分にもはっきり判る。
眼前に在るソレは、人にどうこう出来るモノではない。

どうやったって死ぬ。

明らかに次元違いの存在が、必殺を期して放つ一撃を回避するなど、魔術師だろうが何だろうが人間には不可能だ。







――――それでも、諦める事など、できない。






瞬間――――



――――左腕に痛みが奔った。



ゴゥンンン!!!

激しい光に視界は塗りつぶされ、爆ぜるが如き轟音が耳を打つ。
目映い光の中、それは、俺の背後から現れた。
思考が停止している。
現れたそれが、■■■の姿をしている事しか判らない。

ギィィィン!!

それは現れるなり、俺の胸を貫こうとした槍を打ち弾き、躊躇う事なく男へと踏み込んだ。
「――――本気か、七人目のサーヴァントだと……!?」
弾かれた槍を構える男と、手にした何かを一閃する女性。

ガキッ! カキィンンン!!

二度火花が散った。
剛剣一閃。
現れた女性の一撃を受けて、たたらをふむ槍の男。
「く――――!」
不利と悟ったのか、男は獣のような俊敏さで土蔵の外へ飛び出し――――
退避する男を体で威嚇しながら、それは静かに、こちらへ振り返った。







 風の強い日だ。
雲が流れ、わずかな時間だけ月が出ていた。
土蔵に差し込む銀色の月光が、袴姿の女性を照らしあげる。
「――――」
声が出ない。
突然の出来事に混乱していた訳でもない。
ただ、目前にその人が在る事実があまりに意外すぎて、言葉を失った。
「――――――――」
女性は鳶色の瞳で、妙に真剣に俺を見据えた後。







「問おう。あなたが私の新弟子か」

凛とした声で、そう言った。



「……新……弟子……?」
問われた言葉を口にするだけ。
彼女が何を言っているのか理解できない。

「……………………」
女性は何も言わず、静かに俺を見つめてくる。

――――その姿を、なんと言えばいいのか。

この状況、外ではあの男が隙あらば襲いかかってくる状況を忘れてしまうほど、目の前の相手は特別だった。
自分だけ時間が止まったかのよう。
先ほどまでの死の恐怖はどこぞに消え、今はただ、目前の女性に対する思いだけが胸を占め――――



「頭大丈夫か? 藤ねぇ?」














――――戦え



「何で竹刀で真剣と打ち合えるんだっ!? お前さん、本当に何モンだ?」
「さぁ、何かしら? ひょっとしたら、ポケ○ンやデジモ○かもね」



――――生き残るのは



「士郎、ずっと隠してたけど…………わたしは“タイガー”のサーヴァント。前回切嗣さんに呼び出されたイレギュラーサーヴァントなの」
「その前に事情の説明をしろ、虎……」



――――ただ一組



「何よコレ!? こんなの聖杯戦争じゃないっ!!」
「諦めろ、凛――――虎が出張っている以上、この話はもう駄目だ……」



――――奇跡を欲するのなら汝



「切嗣さんの時はわたしが生徒で攻め役だったんだけど…………士郎は女教師と姉弟物、どっちのプレイが好み?」
「おいコラ、ちょっと待て」



――――自らの力を以って、最強を証明せよ!



「騎英の(ベルレ)――――」
「バルハラ導く(タイガー)――――」
「――――手綱(フォーン)!!!!」
「――――四十の道場(スタンプ)!!!!」







「行くわよ、英雄王。スタンプ台紙は用意した?」







――――その日、運命に出会う







Fate/stay wild
フェイト / ステイワイルド

――――発売予定ナシ――――











〜あとがきっぽいもの〜

 とりあえず、これは再構成物だと言い張ってみる。
…………嗚呼、石を投げないで(汗)

 皆さん、御久しぶり。
黄昏のあーもんどです。
TYPE-MOON二次創作規定ぎりぎりの問題作『Fate/stay wild』――――如何でしたでしょうか?
今作品は、去る2004年3月4日から21日までペーイズム掲示板で開催されていた『第2次激Sネタ提起大会』閉会の記念として執筆・寄贈した物です。
簡単な様でいて実はかなり難しい御題に対し、妙を凝らした力作を投じて下さったSS作家各氏、掲載された激Sを読んで下さった方々、及び当初私がすっかり忘れていたツッコミを揃えて頂いたペースケ氏…………発起人として、そして一参加者として改めて感謝し、本作を以って御礼と代えさせて頂きます。
(各氏の作品はType激SのログNo.831〜837、841、842、851〜855       で見ることができます)

 では、ペーイズムの益々の発展と作者・読者諸氏の幸福を祈って――――
 黄昏のあーもんど
 3/20/2004



・補足・
 それにしても、初のFate短編が体験版でも本編でもなく、店頭デモのパロディってのは如何なものか。
でもコレ、一回はやってみたかったネタで、しかも長編として書くほどの気力が私にないので、必然この形態にならざるを得なかったんですよね。
誰かこの設定で本編の再構成やってくれませんかねぇ…………。
サーヴァント・タイガーについて詳細を知りたい方は以下を選択・反転して下さい。

<Servant Status>
CLASS:タイガー
マスター:衛宮 士郎
真名:タイガ
性別:女性
身長・体重:165cm ■■kg
属性:秩序・虎
筋力 D   魔力 E
耐久 D   幸運 D
敏捷 C+  宝具 EX

―クラス別能力―
『不思議空間』
どんなに不利な状況も自分向きの流れに変える。
偉大なる虎の咆哮は、止めを刺す寸前の敵の動きすら止めるのです。
『野生化』
気力130(オイ)で全パラメーターが大幅アップするが、“御約束”を果たした後は必ず戦場を去らねばならない。
謎のヒーローはしつこく留まらず、ただ去り行く背中で正義を語るものです。
真面目な話、この能力のマイナス要素……即ち登場場面制限さえなければ、タイガーはセイバーに勝る最優のサーヴァントとなっていた事だろう。

―詳細―
幾たびのBADエンドを迎える衛宮士郎の導き手『タイガー道場師範』が、無限の平行世界における衛宮士郎(死に掛け……というか死)の想念を受け、遂に英霊化したもの。
その名前が隠されていた発売前、各所で様々な憶測を呼んだ藤ねぇ。
某へっぽこは「きっとサーヴァントなんだよ」と思い込み、本プレイ初期にその真名が明らかになった際には「大河……タイガー!?」と狂喜したのだが…………真実は言うまでもない。
世界との契約条件は因果の変更との事なので、本体は別にして、BADルート救済者である道場のほうの彼女は十分に英霊の資格があるだろう。
ちなみにこの世界の設定では、彼女こそが前回の聖杯戦争における切嗣氏のサーヴァントだったりする。
召喚の触媒は、ずばり“早死にしそうな正義の味方”または“藤村大河”
“タイガー”に該当する英霊としては他に“タ○ガーマスク”“タイ○ージョー”等が存在する…………彼らが召喚される聖杯戦争は、さぞ凄い事になるだろう。

―技能―
『剣道:A』
五段。
ルール内で腕を競うスポーツ選手としてはかなりのもの……冬木の虎は伊達じゃないんです。
『自堕落:A』
十分な餌と睡眠さえ取れば恒久的に現界が可能。
……普通働かないのは虎ではなくライオンの、それも雄です。
『教員免許:??』
教員の資格。
説教が板につく。
大人の事情で詳細は不明…………中学用や高校用ではない。
Fateの登場人物は皆18歳以上なのです。
『道場主:EX』
世界のどこかにあるタイガー道場の主たる資格。
主なき道場など廃れるしかないので、救済措置存続のため型月の力で必ず生き残る可能性が用意される。
つまり、重度のピンチや相打ちに遭う事はあっても一方的に敗北することはないのです。

―宝具―
『虎竹刀(トラシナイ)』
ランク:C−
種別:対人宝具
レンジ:1
最大補足:1人
学生時代からのタイガーの愛剣。
文字通り竹刀なのだが、何故か真剣と打ち合える。
可愛らしい虎ストラップ付きにもかかわらず、抜けば血を見ずには納まらない性を持つ妖刀。
『バルハラ導く四十の道場(タイガースタンプ)』
ランク:EX
種別:対人宝具
レンジ:1〜99
最大補足:1人
虎竹刀より放たれる赤き印。
因果地平の彼方、あの世とこの世の境界線上に存在するタイガー道場に他者を誘う。
対象は『きのこの依怙贔屓』が働きでもしない限り確実に敗北するように運命を決定される。
反則?
……………………ギャグですから。
『飛頭蛮(フェイトバン)』
ランク:C−
種別:対軍宝具
レンジ:1〜5
最大補足:1〜30人
リン姐さんを頭とする冬木のレディース『飛頭蛮』(リン・サクラ・セイバー・弟子一号)を召喚する。
彼女たちに逆らうことは死を意味する!









ぬはー。視点が斬新です。こんなの思いつきもしませんでした。
しかし、藤ねえが英霊になるのか……
何をした藤ねえ!?








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