ななこの鉄人





ななこ「有彦さん」
有彦「なんだ?」
 ななこが話しかけてくる。無視してもいいが反応するまで呼び続けてくる事は今までの生活で学習済みだ。

ななこ「何か食べ物作ってください」
有彦「は?」
 iいきなり何いいだすんだこの駄馬は。

有彦「・・・・・・どうしたってんだ急に。いつもみたいに人参むさぼってりゃいいじゃねえか」
ななこ「それがですね。私も以前は人間でしたのでたまには普通のご飯が食べたくなるのです」
有彦「で、なんで俺がお前のためにメシをつくらなきゃならんのだ?」
ななこ「見てのとおり、私の手はこんな風になってますから自分で料理できないので有彦さんの料理で我慢する事にしたのです」
 ひづめのついた手をひらひらと振りながらななこは勝手なことを言っている。

有彦「てめえ・・・いい根性してんじゃねえか・・・」
ななこ「では有彦さん。ご飯をつくってください」
 聞いてねえし。

有彦「うるせえ!だまって人参食ってろ!」
 怒鳴りつけるとななこは一瞬目をパチクリさせてから、
ななこ「そうですよね・・・・たとえ私が餓死したところで、有彦さんにとってはどうでもいいことですもんね。有彦さんから見たらわたしなんてご飯食べるだけの高意識体ですしね・・・・・ええ、きょうびの人間なんてそんなもんだってわかってますから━━━━」
 自分の世界にトリップしやがった。

有彦「・・・・・・ちっ」
 ななこに聞こえないように舌打ちをした。

 この前この状態のななこをほったらかしにして出かけて帰ってきたらなんか怪しげな儀式を始めようとしてやがった。
 自分ではなく原因となった俺を儀式の対象にしてやがるあたり始末に終えない。

有彦「・・・・しゃあねえな。おら、居間にでも行ってろ」
 全く・・・・なんでおれがななこに飯を作ってやらなきゃならんのだ・・・・










ななこの鉄人


有彦「おらよ」
 ドン。とななこの目の前にコップを置く。中身は人参ジュースだ。

 ななこは不満気な表情をしてこっちを見ている。
有彦「どうしたんだ?遠慮なんかしなくていいぞ」
ななこ「あのですね、おばかな有彦さんにもわかるように説明するとですね。私は普通の食事がとりたいのです」
 このやろう・・・下手に出てれば・・・・
有彦「あのなぁ。てめえが何を食いてえかわかんねえと何にもできねえじゃねえか」
ななこ「それもそうですね。すいません。えーっとですね・・・・・これが食べたいです」

 どこからかななこがとりだしたのはグルメ雑誌だ。
有彦「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 フランス料理だった。


ななこ「それじゃあお願いしますね、有彦さん」
有彦「ちょっとこい」
ななこ「いたい、痛いです有彦さん!」
 横で悲鳴をあげている駄馬の言葉を無視して耳をひっぱって台所につれていく。


 台所に着いた。
 うう・・・痛いですー。なんてうめいているななこを引っ張って冷蔵庫を開けてみせる。
 うちにグルメ雑誌にのるような立派な料理を作れるだけの食材が有るわけないということをこの駄馬に思い知らせてやらねばなるまい。
有彦「おら!見てみろ!うちの台所にあるもんでそんなもん作れると思って━━━━」
鶏肉だろ、カリフラワーだろ、香草・・・・・ほうれん草・・・・・・・・・・・・
有彦「ウソだろ・・・・」

 自分の目に映る光景が信じられなかった。
 俺は悪い夢でも見てるんだろうか。食材はばっちりそろってやがる。
 なんの冗談かターメリックをはじめとする香辛料まで取り揃えてあるサービスっぷりだ。

ななこ「はい、ばっちりそろってますね」
 ななこも俺の隣で嬉しそうな声を出す。むかついたのでとりあえずどついておく事にした。
ななこ「はう!?なにするんですか有彦さん!」

有彦「はぁ・・・・」
 俺はもう観念する事にした。





有彦「えーっと・・・」
 まずはカリフラワーを一口サイズに・・・それから、鶏肉を叩く・・・・

有彦「おい、ななこ。ちょっときてお前も手伝え」
ななこ「はい、なにかいいましたか有彦さん?」
有彦「手伝え。とりあえずこれ叩いてろ」
 ななこに鶏肉を放る。
ななこ「はあ、いいですけど・・・」
 特別ですからね?と付け足すななこ。いつかしばく。





有彦「で、ここで鍋に火をかけて・・・・・おい何やってんだお前!」
ななこ「はい?」
 ななこを見るとそこには鶏肉、いや、もと鶏肉と言うべきか。
 なんだか「のっぺり」としたものがまな板に張り付いていた。
有彦「加減を知れ!」
ななこ「あう!?痛いですよ有彦さん!」





有彦「よし、じゃ、そろそろソース作りに・・・おい!」
ななこ「はい?また「おい」ですか?好きですねー有彦さんも」
有彦「ああもう・・・・もういいからあっち行ってろ!!」







 なんて悪戦苦闘の末に・・・・
有彦「できた・・・・」
 いままで料理にこれだけ労力を費やした事はなかったので、感動もひとしおだ。
 結局ななこは鶏肉を煎餅にしたり、フライパンを一つだめにしたりなど、ひたすら邪魔しただけだったが。
有彦「よし、ちょうど飯時だな」
 二人分作っておいたので俺の分をななこのと別によそった。
有彦「じゃあ、食うか。ほらよ」
 わーい。とななこも嬉しそうだ。こいつもこういう風に素直なら可愛いものなのだが・・・・・



有彦「ん・・・・んまいな・・・・・」
ななこ「わたしががんばったおかげですねー」
 ななこは自分の功績のみを称えつつ、ひづめを使って料理を口に運んでいく。器用なヤツだ。
 普段なら一撃くれてやるセリフだが、料理がうまかった事に免じて許してやることにした。






有彦「ふう・・・・食った食った・・・・・・」
 うむ、がんばっただけあってかなりいいものができたと思う。
 これならななこも満足してるだろう・・・と、ななこを見ると、黙りこくっていた。
有彦「どうした?満足しすぎて声も出ないか?」
 ななこは俺を見てでっかいため息をひとつくれたあと、
ななこ「まあ悪くはないんですけど・・・・微妙ですね」
 なんて感想をくれた。
有彦「な・・・・・・・・・!」
ななこ「じゃあ、わたしは人参食べてきますから」

有彦「あ・・・・が・・・・・・」

 しばらく絶句していた俺だったが
有彦「・・・・・・・・・・・・
ななこ「はい?何か言いました有彦さん?」
有彦「待てやこの駄馬がー!!」
ななこ「ええぇえぇえええ!?どうしたんですか有彦さん!!」
有彦「やかましい!今日と言う今日はゆるさねえからな!」







 穏やかな街の空気を乱しつつ、今日も騒がしく乾家の日常は過ぎていくのだった。









むう・・・・やっぱリクエストって難しいッス・・・・
どたばたのはずだったのになんかほのぼの系になってるし・・・・


まあ、大門さんすいませんってことで・・・・(^^;


感想などありましたらおまちしてます。








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