四季の町内探索





 理由はわからなかった。
 琥珀が俺を逃がそうかと思っていたかもしれないし、そうでないかもしれない。
 ただいつも俺の目の前にあった座敷牢のドアに鍵がついてなかったんだ。

 今なら外に出る事が出来る。そして自分のやりたい事をやるんだ。
 そしたらそう、まずは秋葉に会いに行こう。偽者にとらわれた秋葉に本当の兄として会いに行くんだ。











四季の町内探索

 時刻はちょうど12時。
四季「さて、この時間だと・・・秋葉は学校か」
 あいつがどこの学校に通ってるかは知らないが、この町内にある高校は一つだけだったはずだ。
四季「じゃ、まずはそこから行ってみるか・・・・」











 ヒュ━━━━タン。

四季「ったく。おかしな体になっちまったもんだな」
 建物の屋根から屋根へと移りながらそんな独り言をもらした。
 こんな移動手段をとっているのはあまり街に詳しくない俺が移動しながら目的地の確認をする必要があったのと、雑多な人間達に囲まれながら移動するのが疎ましかったからだ。まあ、一日で一番強い日差しを浴びせてくる太陽がうっとおしくはあったのだが。

四季「・・・・・・・・・・・っと、あれだな」
 それらしき建物を見つけて一際高くジャンプした。
四季「━━━━ちょうどいい。あそこにいるやつに聞いてみるか」
 中庭にはうまい具合に生徒がいた。男と女の二人組。やつらに聞けばなにかわかるかもしれない。


 スタッ。
 突然目の前に降りてきた俺に男女は目を丸くしている。まあ、無理もないことだとは思うが。

有彦「・・・・・・・・・・・・いきなり空から降ってくるなんてどこのヒーローだお前は?」
四季「ちょっと聞きたいことがある」
有彦「完璧に無視かよ・・・・」
四季「俺のことなんてどうでもいい。で、━━━━」
 と、秋葉のことを聞こうとして急におかしな感覚にとらわれた。
 その原因は女にあった。いや、正確には、女が持ってるものから異臭がしていた。
四季「・・・・・・・・・・・・こんなまっぴるまからそんなもん食うなんて、正気か?」
有彦「あ」





  ビシィ━━━━!

 なんだ?なんかこう、急に空気が張り詰めたような感じが・・・・
シエル「・・・・・・・・・・・聞きたい事ですか。では、こんなところで話をするのもなんですし、ちょっとついてきてもらえますか?」
四季「あ?ああ、別に構わんが・・・・」
 別に俺はここでも構わなかったが、女の方に何か都合が有るかもしれなかった。
 まあ、秋葉のことが聞けるなら別にどうでもよかったので、女の提案に乗る事にした。
有彦「せ、先輩!俺ちょっと用事思い出したからこれで!」
シエル「さあ、行きましょうか。私もあなたに話がありますし」
 男は女にも無視されている。不憫なヤツだ。
 用事が有るという男を放って俺は女についていった。




 女につれてこられたのは体育館の裏だった。
シエル「さて・・・・では私からいいですか?」
四季「ああ、そういえば俺に話があるとか言ってたな。何だ?」
シエル「ええ。あなたがさっき『そんなもん』と言ったのは、カレーの事ですか?」
四季「あ?ああ、そうだが・・・・・」
 こんな昼間っから、屋内ならいざしらず中庭でカレーを食うなんておかしい。と続けようとした瞬間だった。


シエル「カレーに対する冒涜ですか!?」
 ボゴォ!!
四季「ハゴ!!??」

 俺の鳩尾に深々と女のコブシが突き刺さっていた。
四季「は━━━━」
 必死に息をしようとする俺に向かって第2撃が飛んでくる。
四季「ちょ、ちょっとま━━━━」
シエル「カレーの素晴らしさがわからないような不届き者には天誅です!」


 ドドドドドドドドドドドドドドドドド!
 弾幕が張れそうなほどのコブシが注がれる。


シエル「これで・・・・・終わりです!」
四季「グアァァァァアァァァァ!」

 バッコーン・・・・・・・・・・・・
 強烈なアッパーを食らって漫画でしかお目にかかれないような吹っ飛び方をする俺。

 ドサッ。
シエル「これに懲りたら二度とカレーを冒涜などしないことですね」
 ひくひくと痙攣する俺をほったらかしにして女は去っていく。
四季「俺が・・・いつカレーの悪口をいった・・・・・」
 理不尽な暴力に対する嘆きをもらしたところでそれを聞くものはいなかった。














四季「・・・・・ったく、えらい目にあったぜ・・・・・・」
 公園のベンチで一息つく。とりあえず学校を探すのはやめた。
 秋葉があんなやつ同じ学校に通ってるとは思えない。
四季「適当なヤツをひっつかまえて聞いてみるか・・・・・」
 痛みも引いたところで腰を上げた。人間が多いところはあまり行きたくはないが、人探しに適したところが思いつかなかったので街に出る事にした。



四季「さて、どいつに聞けばいいやら・・・・・」
 街に出たのはいいものの、誰が秋葉の行方を知ってるかなんて見当もつかない。そんな時、一人の外人が目に入った。
 飾り気のない服が逆にその美しさを際立たせている、見とれるような金髪を持った女だった。

四季「綺麗な外人だな・・・・・・・・まあ、秋葉には及ばないけど」
 そんな独り言をもらしていると、女が突然こっちを見て
アルク「見つけた・・・・・・・・・」
 そんなことを言った。なんかやたらと睨みつけてるが、初めてあったやつに恨まれるような覚えはない。それとも和服を着てるやつを探してるんだろうか。たしかに周りを見てみると浮いてるような気はするが・・・・・・・・・・


アルク「やっとみつけたわよ、ロア」
四季「は?」
 ロア?だれのことだ?そんな知り合いは俺にはいないぞ?
アルク「とぼけても無駄よ、貴方からロアの波動がもれてる」

 女のいうことはさっぱりわからない。
四季「おまえなにいってるんだ?人違いじゃ━━━━」
アルク「問答無用!」
 女は俺の言う事を聞かずにいきなり襲い掛かってきた。
 しかし所詮女の攻撃だ。さっきみたいのは置いといて、ふつうの人間、それも女の攻撃なんて軽く避け━━━━

 ズバァ!!

四季「な!?」
 女の放った爪による一撃は、俺の想像を遥かに上回る鋭さだった。
 交わしきれなかった腕がざっくりときれている。

アルク「へえ、なかなかやるじゃない。でも、次はこうはいかないわよ」
四季「ど、どうなってやがんだよこの街の女は!」
 状況はまったく理解できなかったが、逃げないと間違いなく殺されそうだったので慌てて俺はその場から逃げ去った━━━━







四季「・・・・・一体どうなってやがるんだ、この町は?」
 ようやく女をまいてから路地裏で休息をとりながら呟いた。
 逃げる途中にも何回か攻撃されたので体はすでにボロボロだ。
四季「この街にすむ女は護身法の習得でも義務付けられてるのか?」
 うん、その可能性は大いにありうる。
 ともかく、俺は屋敷に帰ることにした。この時間になればもう探し回るより屋敷にいたほうが秋葉にも会えるだろう。

 そうしてもう屋根を飛んでいく体力もない俺が街を歩いて帰っていたときのことだ。
 ドン、とバカでかいトランクを持ち運んでいる女と肩がぶつかった。

四季「痛ってえなてめえ!喧嘩売ってんのか!」
 気が立っていて、体もボロボロだった俺は思わず叫んでしまった。
 にも関わらず俺にぶつかってきた女は笑みを浮かべて
青子「へえ?やろうっての?」
 そんな挑発的なセリフをはいてきた。

 その一言で完璧に頭にきた。
四季「てめえ・・・素直に謝れば許してやろうと思ったが・・・・もうゆるさねえ・・・・・」
青子「やるんだ。仮にも三原色の名を冠する魔術師の私にケンカを売ろうなんて、いい度胸してるわね」
四季「わけわかんねえこといってんじゃねえ!」
 そういって俺は女に向かっていった。









 30分後。
四季「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 焼け野原になった街だったものの真ん中で俺は倒れていた。
四季「・・・・・・・・・・どうなってるんだこの街は・・・・・」
 30分前にはいたセリフを繰り返す。
 ひょっとして、俺はこの町じゃ一番弱いのか・・・・?だとしたらこれ以上いざこざに巻き込まれないためにも早く屋敷に帰らなくてはならない。
 「不死」の能力をもってしてなお瀕死の体を引きずって屋敷に帰っていった。



四季「はぁ・・・やっと着いた・・・・」
 この屋敷がこんな坂の上にあることが恨めしかったがそんなことより早く体を休めたかった。
四季「こ、この際離れでも・・・・」
 そうして離れのドアを開けた瞬間、




バカンッ。



 床が無くなった。
四季「なぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
 落ちながら絶叫をあげていく俺の疑問を聞くのはただあたりに広がる暗闇だけだった。





四季「う・・・・・・・・・・」
 俺が目を開けると辺りには見慣れた光景。
 どのくらい気絶していたのだろうか。空気の感じからして、おそらくもう深夜にはなっていると思うのだが。
 また出れるかという期待を持って座敷牢のドアに手をかけてみたが、今度はきっちり鍵がかかっていた。
四季「くそ・・・・また逆戻りかよ・・・・・」
 そうして無駄だとしりながらどうにかして出れないものかといろいろと試行錯誤しているときだった。



コツ・・・・・コツ・・・・・・



 足音が聞こえてきた。
四季「・・・・・・誰だ?琥珀か?」
 質問を投げかける俺に返事をした声は、
秋葉「私です」
四季「秋葉か!?」
 そう、俺が一番聞きたかった、秋葉の声だった。

四季「秋葉!俺はお前に会いたくてずっと、ずっと━━━━!」
秋葉「すいませんが、少し静かにしてもらえますか?ここは声が響くので」
四季「ああ、ごめんな秋葉。で、俺に会いに来てくれたんだよな?俺を解放しにきてくれたんだよな?」
 俺の思いは秋葉にとどいていたらしい。反転した俺が寂しくないように秋葉の髪も赤くなっている。

秋葉「いえ、そうではないのです」
四季「え?」
 一瞬状況がつかめずに、間抜けな反応をしてしまった。

秋葉「貴方が今日一日動き回ってくれたおかげで兄さんの具合がかなり悪いの。兄さんを元通りにするには・・・わかるでしょう?」
四季「ええ・・・・っていうと・・・・秋葉の髪が真っ赤なのは?」
秋葉「ええ。貴方の思っているとおりですわ」
 にっこりと微笑みながら俺の予想をあっさりと肯定してくれた実妹。


秋葉「さあ、それでは覚悟は出来ましたか?」
四季「あ・・・」
秋葉「では行きますよ。奪いつくして差し上げます!」



四季「ああああああああああああああああああああ!」
 そうして俺の今日何度目かの絶叫は夜の闇に飲み込まれていった。






 数日後。
志貴「あれ?ここ、降りられるんだ」
 久しぶりにおとずれた離れで偶然地下へいけそうな階段を発見した。
志貴「何があるんだろう・・・・・」
 興味をひかれて降りていくとそこにあったのは一つの座敷牢。

四季「・・・・・・ひっ!?」
志貴「・・・・四季!?おまえ、こんなところにいたのか?」
四季「志貴?おまえ、志貴か?」
志貴「ああ、そうだけど・・・・・」
 四季はじっとこちらを見ている。
 また俺に襲い掛かってくるのかもしれない。
 そう思って警戒してみたが、
四季「志貴!志貴!おまえは大丈夫だよな!?俺に危害を加えたりしないよな!?」
志貴「は?」
 四季はすがるような目で俺を見ている。
四季「なあ、お前は大丈夫だよなぁ!?」
志貴「あ、ああ・・・おまえが手を出してこない限りは何もしないけど・・・・」
四季「よかった・・・おまえだけ、おまえだけが俺の友達だ!」
志貴「え?」
四季「志貴!頼むから俺と友達でいてくれよな!?」

 よくわからないけど、四季は相当恐ろしい目にあったんだろうな・・・・
 俺にすがり付こうとする四季をどうしたものかと考えながら、俺はひとつ、大きなため息をつくのだった。










おまけ

秋葉「でも、なんで四季が外に出れたのかしら?」
琥珀「ああ、それなら私が鍵を開けておいたからですよ」
秋葉「え?」
琥珀「ほら、四季さまっていつもあんな狭いところにいるでしょう?たまには外の空気を吸わせてあげようかなー・・・・って秋葉様?」
秋葉「そう。じゃあ、あなたが全ての元凶なわけね?」
琥珀「えーっと。そういう言い方をすればそうですけど、ねえ秋葉さま。ちょっと待ってくださいな。秋葉さま、秋葉さまってば!」
秋葉「あなたも少し反省なさい!」



琥珀「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 私の今日はじめての悲鳴は温かな朝の日差しにやさしく包み込まれていった。








ども、リクエスト第5弾と言うわけなんですが、
今までで一番長いものになりましたね。
四季のはっちゃけもの、ということでしたが、はっちゃけたのは周りの方々という気がしなくも・・・・
いえ、これはこれでいいと信じましょう。
何はともあれ、執筆時間もいままで一番かかったと思います。
楽しんでいただければいいのですが・・・・


では、感想などありましたら、病めるときも健やかなる時も受け付けてますので
いただけましたら元気が出ます。









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