月庭安話









「今日みんなで飲まない?」

 俺の提案にみんなは一瞬呆然としていたがすぐに笑みを浮かべた。

 もとよりこういう催しが好きな琥珀さんはともかく、秋葉も何だかんだいってみんなで飲むのが好きだったりする。翡翠も翡翠で楽しんでるようだ。

 一応今回はアルクェイドと先輩は呼ばずにおいた。
 いつもなら騒ぎになることがわかっていながら仲良くして欲しいなと思って呼ぶのだが今日ばっかりは静かに飲みたかった。




 そして夜━━━━









月庭安話







「これはまた・・・・・」


 机に並べられた酒とつまみを目にして思わず声が漏れた。


「秋葉・・・これ・・・」
「ええ、兄さんがあの人外を呼ばないと聞きましたので」
「にしたってこれは・・・」


 琥珀さんが作るつまみが一級品なのはいつものことだし、酒が高価なのもいつものことだけど、問題はその種類にあった。



 いつもならばワインやウィスキーがその大部分を占めるのだが今日はちょっと様子が違った。

「わたしがちょっとわがままを言いまして」

 ちょうどそのとき台所から新たなつまみをもって来た琥珀さんが言った。

 そう。テーブルには日本酒や焼酎がいつもの倍近くあった。
 しかし、さすがに遠野家だ。日本酒一つとっても大吟醸とかそういうものばかりだ。
 「美少年」とかいうラベルが貼られたものもあったが多分琥珀さんの趣味だろう。


 そして酒宴は開かれた。















「ちょっと兄さん!聞いてるんですか!?」
「ば、ばか、秋葉・・・・!お前絶対酔ってるだろ!」












「ちょ・・・琥珀さん!なにやってるんですか!」
「あはー♪」












「(・・・・コックリ・・・・・コックリ・・・)」
「・・・・翡翠?大丈夫・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・はい・・・」
「・・・・全然大丈夫そうじゃないんだけど・・・・・・・」













 つ、疲れた・・・・・・

「ふー・・・」
「どうなされたんですか志貴さん?」
「いや、ちょっと庭のほうで休んでくるよ」
「何言ってるんですか兄さん。全然飲んでらっしゃらないじゃないですか」
「だめですよ、秋葉さま。志貴さんの体はあまり無理がきかないんですから」
「う・・・・・それなら我慢するけど・・・兄さん、戻ってきますよね?」
「ああ、少し休んだら戻ってくるよ」

 そうして二人に断って庭に涼みに行った。ちなみに翡翠はダウン済みだ。


 せっかく静かに飲みたいと思って先輩もアルクェイドも呼ばなかったのに・・・・
 なんか二人には悪い事したな・・・


 そんなことを考えながら30分ほど休み、そろそろ戻ろうかと思ったとき、琥珀さんが庭にやってきた。

「あれ?琥珀さん。秋葉は?」
「お眠りになられました。志貴さんから飲もうなんていうのは珍しい事ですから、いつもよりハイペースで飲んでおられましたからね」
「そうか・・・」
「はい。秋葉様もよろこんでおられました」
「まあ、それならいいんだけど」
「志貴さん。隣・・・座ってもいいですか?」
「え?うん。別にいいけど・・・・」
「じゃあ、失礼しますね」
 そうして二人でならんで庭を眺めていると









 こつん・・・・





「え・・・・・・・・?」
 隣に座った琥珀さんが突如俺の肩に頭を預けた。









「わたし・・・時々思うんですよ」
「?」
「今のこの幸せが、ホントはみんな夢なんじゃないかって・・・」
「・・・・・・・」
「そして・・・目が覚めたらわたしはまだ小さな子供で、槙久様に仕えてるんじゃないかって・・・・」
「そんな・・・」
「そんなことを思いながら眠りについて、朝を迎えて・・・それでいつもほっとするんです」
「変ですよね・・・本当はちゃんとこっちが現実だって頭では理解できてるはずなのに、現実である実感がわかないんです」




「琥珀さん・・・」
「あはっ。わたしちょっと酔っちゃったみたいですね。お部屋の方にもどりましょうか」







 グッ・・・・・・・






「え?し、志貴さん?」
 離れようとする琥珀さんを抱き寄せる。


「大丈夫・・・怖い夢は終わったから・・・今こうしている俺も、琥珀さんも、みんな現実のものだから━━━━」


「志貴さん・・・・・」


「もし現実があやふやになったら、俺を呼んで?頼りないかもしれないけど・・・いつでも駆けつけるから・・・」



 琥珀さんは何も言わずにそのまましばらく俯いたあと、
「はい・・・・」

 そう返事をして俺をしっかりと抱き返した。







 静かなる夜は、今日も月の光に包まれながら過ぎていく━━━━











デイリー1111ヒットゲット(拉致)されたまひまひさんのリクエストでした。
えーっと・・・「お酒で琥珀」とのことでしたが・・・・
下戸の俺には酒の事なぞさっぱりわからんわけで・・・

ほとんど酒のことに触れてない事にはこの際目をつぶってあげてください。

まあ、実際1111踏んだの俺だしな。

それにしても最近シリアスっぽいのが増えてますね。
いかん兆候じゃい。
普通の文になるとシリアスの方が書きやすいという罠。

いい加減ギャグも書かないかんですな。
こんな時こそシエル登場か?







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