あなたの右手のお手伝い









「・・・・・・・・ねむ・・・・・・・・・」


 いつもどおりに翡翠が起こしにきて、いつもどおりに目覚め、いつもどおりに準備する。
 でも、正直朝はあんまり強いほうじゃなかったんだ。



「う、うわあぁぁぁ!?」












あなたの右手のお手伝い








「これはどうですか?」
「い、痛タタタタ!」
「うーん、どうやら捻挫みたいですねー」
「そうか・・・・うん、でもこれだけですんでよかったよ」
「そうですねー、じゃあテーピングで固定しときますね」
「ありがとう、琥珀さん」


 そうして琥珀さんにテーピングを巻いてもらっていると秋葉が勢いよくドアを開け放って部屋に入ってきた。




「に、兄さん!大丈夫ですか!」
「あ、秋葉!?」
「兄さん・・・・怪我の具合はどうですか・・・・?」
「ああ、右手をちょっと捻挫したくらいだよ」
「そうですか・・・・全く兄さんったら・・・朝早くから階段を転げ落ちるなんて、たるんでる証拠です」
「そう攻めてくれるなよ・・・一応動かさない分には問題ないけど動かすと痛いんだからな」
「そうなんですか?」
「ええ、ちょっと強めに捻られたみたいで、1週間くらいはテーピングをはずせないでしょうねー」
「・・・結構大きい怪我じゃないですか!なんでウソをついたんですか兄さん!」
「・・・・・・あんな顔してた秋葉にそんなこといえないだろ・・・・・・」
「兄さん・・・・・・・・・」



 秋葉はそういうとちょっと考え込んでいたが、やがて顔を上げてこう言い放った。



「わかりました!私が兄さんの右手のお手伝いをしましょう!」








「は?」



「いえ、だから学校の授業とかでもその右手じゃノートを取ることもできないでしょう?ですから、私が常に付き添って兄さんの手伝いを━━━━」
「ちょ、ちょっと待て秋葉!」
「なんですか兄さん。これは妹として兄を思うが故の当然の行為です!」
「そ、そんなこと言っても秋葉だって自分の授業があるだろう!」
「そうですよ秋葉さま。ここは私に任せて━━━━」
「いや、琥珀さん。それも違うから」
「姉さん。志貴様のお世話でしたら私が・・・・・・・」
「翡翠まで何言ってるの!?」
「ご迷惑でしょうか・・・・・・・?」
「いやいや、そうじゃなくて・・・ノートなら治ってからクラスメートに写させてもらうから」
「「「・・・・・・・・・・・」」」
「三人とも、何でガッカリしてるの・・・・?ってああ、もうこんな時間に!ごめん琥珀さん!今日は朝ごはんはいいや!翡翠、カバンお願い!秋葉、お前も早くしないと遅れるぞ!!」



 そうしていつもと違う騒がしい遠野家の朝は過ぎていった。











 で、昼休み。
「遠野くん、その手どうしたんですか?」
「ああ、今日の朝ちょっと捻ってさ」
「シエルさん、あなたには関係のないことですからどうぞお気になさらずに」
「あ、秋葉・・・・」
「あら、私が遠野くんを心配するのは私がそうしたいからです。秋葉さんにどうこう言われる筋合いはないと思いますけど?」
「先輩も・・・・・・・」
「はい、遠野くん、あーんしてください」
「せ、先輩・・・・!じ、自分で食べられますから・・・・・!」
「何言ってるんですか。利き腕がそんなんじゃパンぐらいしか食べられないじゃないですか」
「そ、そんなこと言っても・・・・・・」
「はい、いいから早くあーんしてください」
「・・・・・・・・あーん・・・・・」
「はい。おいしいですか遠野君?」
「う、うん・・・・ありがとうございますせんぱ━━━━」
「兄さん!シエルさんのお弁当ばかり食べてないで私の分も食べてください」
「琥珀さんの、の間違いじゃないんですか?」
「い、いいでしょう!あなたには関係ありません!」
「ふ、二人とも落ち着いて・・・・・・」
「遠野君は」
「兄さんは」

「「黙っててください!」」
「は、はい・・・・」


「大体なんであなたがまだ日本にいるんですか?吸血鬼はもう退治し終わったのでしょう?早く本国にでも帰ってカレーを食べてればいいじゃないですか」
「吸血種退治は死徒が死んでからが本番なんですよ。素人が口を挟まないでください。それに、どこかのお嬢さんがいつ人の血を吸い出すかわかりませんしね」
「・・・・・・・喧嘩をうってらっしゃるんですかシエル先輩?」
「あら、わたしは何も秋葉さんのことだなんて一言も言ってませんよ?」
「・・・・・・・・・・」





「? もういいのか?」
「・・・・・・・ああ、ああなったら近づかないほうが━━━━」
「兄さん、どこに行くんですか。私のお弁当食べていないでしょう」
「私の分もまだまだありますよ」
「いや、俺もおなかいっぱいで━━━━」
「遠野君。育ち盛りの男の子が何言ってるんですか」」
「そうです、いつもの半分も食べてらっしゃらないじゃないですか」
「あ・・・・・・・・・」
「ほら、こちらへどうぞ」
「あああああああああ!」
「達者でなー・・・・・・・」

 こうして有彦に見送られながら都合三人前近く昼食を食べさせられ吐き気をこらえながら午後の授業を受けることになった。










 夜。
「・・・・・・・なんだかんだ言って右手が使えないといろいろと不便だな・・・・」

 夕食も昼食同様琥珀さんと翡翠が交互に食べさせようとしてこれまた昼食同様いつもの倍近く食べさせられた。

しかも翡翠はともかく、琥珀さんの場合こっちの腹の具合がわかっていながらやってそうで性質が悪い。


「よし、今日はもう早いところ寝よう」

 また何かされちゃかなわないしと思い、布団をかぶって・・・・・・



「志貴ー。遊びに来たよー」


 厄介ごとの種が明るくやってきた。


「どうしたんだよ・・・・今日はちょっと疲れててもう寝たいんだけど・・・・・」
「なに志貴?手怪我してるの?」

 聞いてないし。

「・・・・今朝階段落ちて捻ったんだよ」
「朝っぱらから階段オチ?」
「どこでそんな言葉おぼえたんだお前は」
「まあまあ、いいじゃないそんなことは」
「・・・・それはまあ、そうだけど・・・」
「じゃあ右手が使えないみたいだから今日は私がしてあげるね」
「・・・・・・・あ、アルクェイド!ちょっと待て!」
「もう、いいじゃない。ほら、観念して━━━━」

 アルクェイドが俺の静止を振り切ってズボンに手をかけようとして・・・・・・・・
「遠野君!夜のお供に来ましたよ!」

 シエル先輩が窓を破って侵入してきた。

「せ、先輩!何しに来たの!?」
「いえ、遠野君右手が使えないでしょう?だからその・・・・・・・・たまってるんじゃないかなー、と思って・・・・・・・・」
「先輩・・・・・・・・」
「なによ。もう私がいるんだからシエルは帰りなさいよ」
「何言ってるんですかこのアーパー吸血鬼は。あなたには殿方に奉仕する方法なんてわからないでしょう」
「ちょ、先輩何を言って━━━━」


 と、シエル先輩とアルクェイドが言い争っていると

「何の音ですか兄さん!」
「志貴様。どうかなされたのですか?」
「これはまたすごいことになってますねー」
 騒ぎを聞きつけた翡翠、琥珀さん、秋葉がやってきた。


「・・・・な、何をやってるんですかこの人外は!」
「私は志貴と遊びに来ただけよ」
「わたしはアルクェイドを止めに・・・・・」
「何言ってるのよ。シエルだって志貴に会いに来たんでしょう?」
「ああもう、なんでもいいですから早く帰ってください!」
「志貴様をお助けです」
「あはー、志貴さん。ここは騒がしいので私のお部屋に来ませんか?」
 みんな思い思いに好き勝手な事を言ってる。





「・・・・・・・・・・・もう、好きにしてくれ・・・・・・・・」
 そんなみんなを尻目に俺は一人布団をかぶって・・・・・・・・・・




「ちょっと志貴!何寝ようとしてるのよ!」
「そうです!一人で休まないでください!」
「兄さん!私よりこんな人外を選ぶんですか!?」
「志貴様をお休みさせないのです」
「しきさんモテモテですねー」




 妨害されるのだった。






 結局、手が治りきるまで毎日こんな日が続くのだった。










えー、リク8弾。「志貴が右手を捻挫してそこから始まるどたばたかギャグ」とのことでしたので
初めてどたばたモノを書いて見ました。


うん。やっぱり難しかったです。
というか途中から疲れてかなり中途半端なオチになりました。
それにしても最近SS書きまくってリクとかじゃなくなってきました。
「リク以外じゃSSかかねえ!」なんて思ってたのも遠い昔の話です。







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