燃えろ!お嬢様!








 ある昼下がりの午後。今私は藤乃と二人で街を歩いてる。
 特にあてがあるわけではない。なんとなくだ。



 それにしても式め・・・・せっかく家出をする、なんていう涙ぐましいことまでした私をさしおいて幹也と仲良くなるなんて・・・・・・・
 あれだけいろいろと計画した私がバカみたいじゃない!


「━━━━ざか・・・鮮花」
「え?何?」
「どうしたんですか鮮花?難しい顔をして」
「あ・・・いや、なんでもないわ」
「ならいいんですけど━━━━あら?あれ幹也さんじゃないですか?」
「え?」
「ほら、あの着物の女の人と一緒に歩いて━━━━」
「なんですって!?」
「え?い、いや・・・あの人が・・・・・・」
「あ、ああ・・・ごめんねいきなり大きな声を出して・・・」


 藤乃が言った方向を見て私も納得した。
 上からしたまで真っ黒な格好をした男と着物にジャンバーなんてシュールな格好をした二人組みなんて他にいるわけない。

「ふふ・・・ふふふふふ・・・・・」
「・・・・・・・・あ、鮮花・・・・?」

 まったく・・・・いい度胸してるじゃない・・・まあ、いい機会だわ。二人がどんなデートしてるのか突き止めて、隙あらば式を亡き者に、何てことも・・・・


・・・・・・・・わよ
「はい?」
「藤乃!あとをつけるわよ!!」
「えええぇぇぇえぇぇぇぇぇ!?」
「ほら、何ボサッとしてるの!行くわよ藤乃!」
「ちょ、ちょっと待ってください鮮花!」







燃えろ!お嬢様!





 まずはデパートか・・・何を買うつもりかしら・・・
「よし、入るわよ・・・・」
「鮮花・・・・わたし、帰ってもいいですか?」
「だめよ!あなたがいた方が何かと便利なのよ!」
「便利、ですか・・・?」

 そう、式を亡き者にするのであれば藤乃の能力は不可欠であるといっていいだろう。

「いい?藤乃。あの女には一度会ってるわよね。あの女は実は幹也の命を狙う暗殺者なのよ」
「ええ!?」
「それでホントならすぐにでも追い返したいところなんだけど、あいつは実に用意周到な女で隙を見せないのよ」
「そ、そうだったんですか・・・」

 普通の人なら確実に怪しむ話だが藤乃はあっさりと信じてくれた。この子のこういう素直なところが私は大好きだ。


「・・・・・わかりました!私の幹也さんを殺すなんてマネは絶対にさせません!行きましょう鮮花!」
「・・・・・・・・・は?」
「ほら、なにをしてるんですか!」

 いや、喫茶店に入るのは大いに賛成なんだけど・・・

イマ、ナンテイッタノコノオンナハ・・・・・・?

「・・・藤乃・・・私の聞き間違いなら謝るけど、今『私の幹也』って言った?」
「あ・・・・・・」
 藤乃は私の言葉に顔を赤らめてうつむいている。


ち・・・・・・・・
 私はここに新しく誕生した敵に軽く殺意を覚えながらも今は式をなんとかする事を優先する事にした。








「・・・・ったく、なにやってるのよ・・・」

 アクセサリ買った後早々にデパートをでた二人は公園についた後なんの動きも見せないまま2時間ベンチでボケーッとしてた。

 あの女がどんなアクセサリを欲しがるって言うのよ・・・大体着物に合う銀細工なんてあるわけないじゃない。


「鮮花・・・・・・・あの人ホントに暗殺者なんですか?」
「どうしたのよ急に」
「いや・・・今なんか大チャンスだと思うのですが・・・」
「甘いわね藤乃。あいつは慎重に慎重を期す事でその名を裏世界にとどろかせたのよ」
「そ、そうだったんですか・・・」

 洗脳完了。


「あ、動いた。よし、追うわよ藤乃!」
「はい!」














「じゃあ、今日はありがとう式」
「ふん・・・こんなのなんでもない。じゃあな」




「な、なんて出たらめな眼なの・・・・」

 その後電柱を捻り倒したり目の前を火の海にしたりと(命がけの)妨害をしたけど、その全てを式は「殺して」のけた。


「あ、鮮花・・・・」
 藤乃が途方にくれた顔で私に声をかけてきた。

 あ、そういやこんなのいたっけ・・・

 正直なところかなり疲れたので早く帰りたかった。


「ああ、もう帰っていいわよ」
「ええ!?暗殺者は!?」
「え?えーと・・・今回は失敗とか、そんな感じで」
「そうですか・・・じゃあ、今度こそ幹也さんをあの人の魔の手から救いましょうね!」
「そうね。じゃあまた今度ね」
「はい。それではまた」

 素直に私に言う事を聞いて立ち去っていく藤乃。
 いくらなんでも少しくらい人を疑う心を教えた方がいいかもしれない。



 そのまま一人でポツンと立ち尽くしていたが、
「じゃあ、私も帰ろうかな・・・」
 一人で呟いて帰ろうとしたときに思い出した。
「そういえば橙子師に呼ばれてたんだっけ・・・」

 そうして私は疲れきった体を橙子師の仕事場へ向けた。









「何の御用ですか橙子師?」
「ふふ・・・実はね、用事があるのは私じゃないの」
 橙子師はなぜか眼鏡をかけて微笑んでいた。
 私と魔術がらみの話をするときは眼鏡をはずしているはずだ。


「? おっしゃりたい事がよくわからないのですが・・・」
「ふふ・・・幹也君。もういいんじゃない?」
「と、橙子さん!」
「またまた、照れちゃって♪」

 二人の会話に私はいい感じに置いてけぼりを食らっていた。


「幹也。なんなの一体?」
 ちょっとイラついて話しかける私に幹也は「何か」を差し出した。
「ああ、えーっと・・・ハイこれ」
「? なにこれ?」
「ほら、今日は鮮花の誕生日だろ?」
「・・・・・え?」


 呆然とする私に手渡されたのは一つの銀細工だった。
 先に小さな十字架をあしらったネックレスをもらったまま私はしばらくなんの反応もできずにいた。


「・・・・・・・・鮮花?えーと・・・・気に入らなかった?」
「え?ああ、いやそんなことはないんだけど・・・これ、どうしたの?」
「いや、だから今日買ってきたんだけど・・・・」
「で、式に選んでもらったわけ?」
「え!?いや、式には女物のアクセサリーなんて一人じゃ買いに行けなかったからついてきてもらっただけだよ」
「そ、そうだったの・・・?は、あはは・・・・」


 そこまで聞いて笑ってしまった。
 でも、しょうがないと思う。結局私一人でバカみたいに二人をつけまわしてたわけだから。それに、式がアクセサリーを選ぶなんて、天地がひっくり返っても起こりそうにない情景を想像してしまった自分が滑稽だった。


「ど、どうしたの鮮花?」
「ありがとう幹也。大切にさせてもらうわ」
「え?・・・うん、喜んでもらえたなら僕も嬉しいよ。でも・・・」
「何?」
「なんで僕が式とアクセサリーを買いに行ったことを知ってるの?」
「・・・・・え?まあ、そんなことどうでもいいじゃない!!」
「うん・・・・・・・まあそうなんだけど・・・・・・」
「じゃあ、問題も解決したところで、今日はお礼に幹也に夕飯でもつくってあげるかな」
「え?いいよそんな」
「遠慮しなくていいわよ。可愛い妹の好意くらい受け取ってよ『お兄ちゃん』?」
「う、うん・・・・じゃあごちそうになろうかな・・・・」
「よし、じゃあ行こうか。じゃあ、そういうことで失礼しますね橙子師」
「ええ。楽しんでらっしゃい」

 そうして私と幹也は橙子師の事務所を後にして幹也の住むアパートへ向かって、そのままその日は幹也のところに泊まった。
 もちろん、私がちょっとだけ期待したような「間違い」は起こらなかったけど。







 幹也はまだ私を妹としか見てないかもしれないけど・・・・





 まあ、今日くらいは許してあげてもいいかな━━━━












クリスマス特別SS「ほのぼのバージョン」でしたが。


はばたけ!野郎どもの夢を乗せて!!


無理ですか?無理ですか?
うん、俺も無理だと思う。



ちなみに藤乃はやたらとひどい扱いですが、俺は空の境界のメンバーでは藤乃が一番大好きです。
まあ、動かしやすいのは鮮花と藤乃でボケまくるのですかね。
楽しんでいただければ幸いです。


しからば御免!





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